2016.04.05 Tuesday
四国遍路歩き旅 6 声字実相
自分とは何?生きているということはどういうこと?、時間と
は何?死ぬというのはどういうこと? そんな漠然とした疑問が
思春期の頃から強くあり、高校時代には仏教に関する本を読み始
めていた。
60歳を過ぎた今でも、答えめいたものを何も得られたわけでな
く、肉体的衰えを少し感じながら、その思いは深まるばかりだ。
四国遍路は、空海ゆかりの寺を訪ねる旅である。偉大なる宗教
家、詩人、書家であった空海は、私の疑問にどう答えてくれるの
だろうか。
空海の密教の教えは、ひと言で言えば「即身成仏」である。
「宇宙の真理、大日如来があなたです」ということだ。果たして
私は歩き遍路で大日如来を感じることが出来るだろうか。
また空海は「声字実相(しょうじじっそう)」を説く。声と言
葉が、真実に至る道と説いている。それゆえ「真言宗」というの
だろう。空海は私に、「お前の言葉を歌え」と言っている。
宿を出発し、道を間違えながら、長尾寺の奥の院・玉泉寺も参
拝し、86番志度寺に着いた。五重の塔や、平賀源内の墓があり、
境内は広く、推古天皇の時代に建立された古刹である。
バスツアーでの参拝客も多く見えたが、仲むつまじく手をつな
いで山門を入る中年カップルの後姿が微笑ましく目に付いた。
女性はかなり若そうだった。それ以上詮索することはしまい。
納経所には、お土産や遍路グッズがたくさん置かれていた。も
う少しお遍路の形を整えようと、金剛杖の安いものを買った。菅
笠も欲しかったが、あいにく置いていないということだった。
逆打ち用の納経帳があった。閏年では、逆打ちがご利益がある
といわれているから、そんなところをもくろんでの商売だな。
お寺の前にある和菓子屋の自販機で缶コーヒーを飲み、タバコ
を一服していたら、「お茶をどうぞ」と声を掛けられごちそうに
なる。ありがたい。高齢のおばあちゃんがひとりでやっている店
らしい。帰りに100円の甘い和菓子を一個買った。
志度の海春を五感でマンダラリン
われはなに声字実相うたはわれ
手を取りて山門くぐる遍路かな
第86番札所 補陀落山・志度寺 真言宗善通寺派
本尊 十一面観音像 おん、まか、きゃろにきゃ、そわか
御詠歌 いざさらば今宵はここに志度の寺
祈りの声を耳に触れつつ