藤本すすむブログ「100万回生きたねこ」

2014トルコの旅  ボドルム  有り難きかな



 ボドルムのステージでは、5曲歌った。
 
  1. ボドルム
  2. 君の愛
  3. イスタンブール
  4. 故郷
  5. Memleketim

 「5」以外は、トルコ語と日本語を混じえた構成にし、歌詞が
トルコの人たちにも、日本の人たちにも伝わるように配慮した。
「2」と「5」はトルコでとても親しまれている歌である。トル
コでは初めて演奏したので、どんな反応があるか楽しみだった。
案の定、口ずさむ歌声やコーラス、手拍子が起こり、盛り上がっ
た。日本でも「みんなで歌いましょう」と時々やるが、外国でそ
れができるのは、なんて嬉しいことだろう。

 自分のステージが終わり、最後の出番の和太鼓グループ「大太
坊」の演奏を見ながら会場後ろや横をうろうろしていると、「チ
ョク・ギュゼール!(とても素晴らしい)」と声をかけられ、微
笑み、親指を立てる人たちがたくさんいた。

 舞台が全部終わると、アンカラ大学の学生たちが駆け寄って来
て、少し怒ったような口調で「藤本さん、何で『幸せなら手をた
たこう』を歌わないんですか」という。トルコ語で歌い、少しづ
つテンポを上げてゆくこの歌は、アンカラ大学日本語学科の学生
たちに代々歌い継がれているのだった。
「ごめん、時間が少なくて。次のステージでは必ず歌うね!」
有り難いことだ。

       義神より授かりし 甘き水
       飲みほしたり 有り難きかな
       その力 海を
       超えたり 有り難きかな

       力(ちから)の向いの 山々を
       樫の林を 果樹園を
       身も心も 喜びに満ち
       超えゆきぬ 有り難きかな

       渇けし 我が心 潤えり
       翼を授かり 鳥となり
       互いに 仲間になり
       飛び立ちぬ 有り難きかな

       滴 集まりて 泉となり
       水かさ増して 川となり
       川の流れ 海へ注ぐ
       水溢れたり 有り難きかな

            ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より 

 
| - | 23:01 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  ボドルム  君の愛



 今回のトルコの旅には、相棒にフルート華岡昌生君が参加。
華岡君もトルコは4回目になり、この文化紹介の旅の様子を十分
心得ており、「トルコだからね〜」と何があっても驚かない。

 観客席の椅子が、開会式が予定されている時間を10分ほどすぎ
て、ようやくトラックで搬送され、20分位遅れて開会式はスター
ト。

 この時間や段取りの仕方など、日本人には考えられないトルコ
人の感覚を、受け入れられるかどうかで、トルコが好きになるか
どうかが決まるのではないだろうか。
 ちなみに「ケセラ・セラ」の私は、十分受け入れられるので、
今回が10回目のトルコである。

 華岡君の奥さんは、現在はガーディニングプランナーだが、以
前はファッションデザイナーも凄腕でやっており、華岡君の各日
ごとのステージ衣装プランを、出発前に絵入りで送ってきた。そ
れに合わせて、私はかみさんに自分の衣装を考えてもらった次第
で、二人とも衣装は自分ではこだわらず、いいなりなのだった。

     
     君の愛 死に至らしむ
     恋人を 恋の海に沈ませる
     君の姿 我が心に満ち満ちる
     我には君 君が要る

     愛の美酒を飲まん
     われも落人にならん
     恋に狂ったメジュヌンの如く
     君なり 昼夜我を悩ますは
     われには君 君が要る

     我を殺す事あらば
     灰を空に 散らし給え
     土よ 我を呼び給え
     我には君 君が要る

          ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より

    
 
| - | 22:53 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  ボドルム  僕らは昔から友達だった



 ボドルムに到着。翌日夜に日本文化祭の開会式と舞台があった。
在イスタンブール総領事の福田氏、日本トルコ民間交流協会石本会
長、ボドルム市長(代読)の挨拶のあと、アンカラ大学生による
「ソーラン節」の踊り、和太鼓グループ「蓮」、フルートとギター
のデュオ「ホラネロ」、武術、藤本&華岡、和太鼓グループ「大太
坊」と続いた。

 エーゲ海の夕風が時折強く吹き、ステージの背後が夕日に染まり、
だんだん暗くなる中、人々がたくさん集まってきた。
 今回も来てよかったと思えた時である。まずは一曲目、トルコ語
と日本語を混じえて「ボドルム」から。

 ・・・・・

 エルトュールル号の 凍えた遭難者を
 素肌で温めた 島の娘たち
 テヘランに残された 絶望の日本人を
 命懸けで救い出した トルコのパイロット

 僕らはずっと昔から 友達だったような気がする
 アジアの西と東 遠く離れていても
 心はとても近い国

 ボドルム ボドルム なんて美しい街
 ボドルム ボドルム ありがとうと言うために
           私はあなたに会いに来た

               作詩 藤本すすむ

 
 
| - | 23:40 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  雨のイスタンブール



 エディルネに2泊し、イスタンブールに戻った。途中の高速道路
からは麦秋の大地が見えた。広大でなだらかに波を打つ大地が黄色
に染まっていた。
 時々ライブで歌うシャンソンの「パルチザン」の詩を思い出す。

      もしも春まで 戻らない時
      弟が代わりに 種を蒔くだろう
      麦が実る頃 畑に出かけて
      黄金の麦を 抱きしめてくれ
      私は大地の 塵になるから

 イスタンブールで、先着の石本先生夫妻、Iさん、Sさんとホテル
で合流し、いよいよ始まる文化祭の打ち合わせなどした。

 翌日は、イスタンブールは大雨。午前中、女性軍は観光や買い物
に出かけ、ようやく一人になった私は、ホテルの部屋でギターを弾
いたり歌のチェックをしていた。旅先のひとりの時間が、やはり一
番いい。
 お昼頃、雨のイスタンブールを散歩。ゲジ公園は、昨年のちょう
ど今頃、デモ騒動の嵐であった。

      この地に果たして いるだろうか
      私のように 孤独な者が
      頭には傷 目には涙したが
      私のように 孤独な者が

      誰も 孤独にならぬよう
      切望の火に 燃えぬよう
      師よ 誰もならぬよう
      私のように 孤独なものが

      口は語り 目では泣く
      孤独なものに あわれを思い
      あたかも空の 星のごとく
      我のように 孤独な者が

      この苦悩にて かくも燃えん
      ある日 死の日が訪れたとき
      もしや 墓で見出さん
      私のように 孤独な者が

            ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より


 

 
| - | 23:08 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅 エディルネ  狂える心



 エディルネは、イスタンブールに遷都される1453年までの90年間
都となった古都である。
 タクシーで5分ほどの郊外の平地に、医療博物館が有り見学に行っ
た。川沿いのその地からは、丘の上のセリミエジャーミーが五重の塔
のように美しく見える。

 医療博物館はかつての病院で、音楽や水の音、アロマによる精神治
療が行われていた。現在でも音楽療法はあるが、私にとっても、歌と
音楽は、狂わないための救済であったと思う。
 また今、もっと救済を!

      また溢れしや 狂える心
      川の如くに 水音を立て
      また溢れしや 血の涙
      我を神へ 導き給え

      わが失えり 旅路の友を
      わが胸の傷 癒えることなく
      わが瞳の 血の涙
      川となりて 水音を立て
             
             ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より 
 
| - | 23:25 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  エディルネ  へんなガイド、エロさん



 セリミエジャーミーの前で靴磨きをしていた男が、私たちに勝手
に着いて来て、博物館を案内してくれた。トルコ語で一生懸命ガイ
ドをしてくれてるようなのだが、さっぱりわからない。
 後でごっそりお金を取られるんじゃないかと、かみさんは心配顔
で身を引いていたが、もう一つ別のジャーミーへも案内してくれた。
 後でわかったことだが「ウチジャーミー」という、エディルネの
有名な3つのジャーミーのうちの一つだった。
 彼は、自分で彫ったというけっしてうまいとは言えない刺青を、
腕中に描いていた。彼の名前は「エロ・・・」というのだが、私
たちは覚えやすいように「エロさん」と呼んでいたのだった。

 
 もう今日の観光を終えようと、公園内のチャイハネ(茶を飲む所)
で休憩。私はあいさつ程度でトルコ語での会話がほとんどできない
ので、トルコの歌「ウスクダラ」「Memleketim」「日本の少
女(死んだ女の子)」「雪のブナ林(トルコの原曲)」を歌うと、一
緒に口ずさんでくれた。

 少し恐る恐るガイド料を3人で20リラ払うと、これはジャーミーに
寄付するのだという。「チョク・ギュゼル!(とても素晴らしい)」
と言って、私も100円玉を手渡した。やっと彼に解放されたような気
分になり、また3人でエディルネの街を散歩した。
 翌朝セリミエジャーミーの前で靴磨きをしている彼を見つけると、
寄って行けと言わんばかりに、微笑み手招きしてくれた。やはり、彼
はやさしいトルコ人だったのではないかと思った。

 エディルネの名物料理は、ジェル(レバー)のから揚げ。ガイドブ
ックに載っている「ニヤズィ・ウスタ」という店を探し、旧市街のバ
ザールを抜けてその店にたどり着いた。レバーはもともと好きなのだ
が、さすがにお皿山盛りはちょっと・・・

     富あれど 喜ばず
     貧すれど 悲しまず
     君の愛 我が心を慰む
     我には君 君が要る

          ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より


 
| - | 17:24 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅 エディルネ  セリミエジャーミー



 セリミエジャーミーの中は、荘厳な雰囲気が漂い、そこに神がい
るようだ。高い天井は天国へ続く道であり、たくさんの飾り窓から
差し込む光は、私の魂を照らす。

 日本人観光客も他国の観光客を一人も見ること無く、しばし広い堂
内の片隅で瞑想に耽けていると、トルコの小中学生の修学旅行の生徒
がワイワイと入ってきた。
 日本人を見るのは珍しいのだろう。すぐさま私の方に何人か近寄り、
写真を撮ったり、覚えたての英語で話しかけてくる。

 トルコの歌を少し歌うと、たくさんの生徒が集まり合唱になってしま
った。ここはジャーミーの中である。しばらくして先生が駆け寄ってき
たが、先生まで一緒に歌に加わり、にこやかに話しかけてくる。

     それ 天国の川が
     流れる 神よ 神よと
     出り イスラムの小夜鳴鳥
     鳴くや 神よ 神よと
           
            ユヌス・エムレ『薔薇の花束』より
             
| - | 16:17 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  エディルネ 〜仕事をしなさい〜


              セリミエジャーミーとシナンの像

 6月2日から2週間、今年もトルコを訪れた。地中海とエーゲ海が
交わる港町・ボドルムと、バラの街・ウスパルタで開催される「日
本トルコ外交関係樹立90周年記念日本文化祭」で歌ってきた。

 ボドルムに入る前に、エディルネを旅した。小説「シナン/夢枕獏」
を昨年読み、エディルネは憧れの旅先となっていた。
 イスタンブールから西へバスで3時間半、かみさんとオヤ(トルコ
の手芸)の西田さんの3人の気まま旅。

 エディルネのオトガル(バスターミナル)から宿泊ホテルのある市
の中心街に向かう定期バスで、日本語の少しできる地元の女子大生と
会話し親しくなると、彼女は我々をホテルまで案内してくれた。
 
 ホテルに落ち着き、街へ散歩しようと歩き始めると、どこからか
「Memleketim」のメロディーが流れてきた。
 この歌を今回の旅ではトルコの人達と歌うべく、この1年間ずっと
聴き歌っていた歌だ。なんとも絶妙なタイミングである。

   「アヤソフィアを超えるモスクを建てよ」
    それはオスマン帝国歴代スルタンの夢
   「石をもって神を捕えるのだ」
    それは建築家ミマール・シナンの夢

    シナンの胸にはいつもひとつの言葉があった
    ベネチアを旅した若い頃 
    そこで出会ったミケランジェロに言われた言葉
    「仕事をしなさい」


 
 
| - | 06:04 | comments(0) | trackbacks(0)
2014トルコの旅  ユヌス・エムレ 〜薔薇の花束〜


 
 今回のトルコの歌の旅、テーマは「ユヌス・エムレ〜薔薇の花
束〜」
 旅先最終地のギュネイケント村はユヌス・エムレの生誕地と言
われている。バラ園で、強いバラの香りに包まれ歌った。

 ユヌス・エムレは13世紀ののトルコの民衆的詩人。日本ではほ
とんど紹介されておらず、参考書籍も皆無である。
 昨年12月、国会図書館の蔵書にかろうじて1冊ユヌスの本がある
ことを立川図書館で知り、取り寄せてもらった。110ページほどの、
日本語対訳付きの詩集『薔薇の花束』。

 ところが、貴重な書籍だからか、コピー不可、写真不可である。
手書きで写すしかなく、1週間ほど、時間の合間をみて図書館に通
い、トルコ語の詩と日本語の対訳の全部をノートに書き写した。
 ユヌス・エムレの詩を歌うために、まずは詩の意味から取り掛か
ったのである。

        トルコ共和国文科省
        1993年 アンカラ
         ユヌス・エムレ
         〜薔薇の花束〜

         翻訳 サンチュク・エセンベル
            真理子・エルドアン
            よう子・シュレン
            岩永和子

 ユヌス・エムレの詩にはタイトルがない。また古いトルコ語で書
かれており、訳者はその荘重さを重んじ、あえて古い日本語で訳し
ている。訳者に感謝!

 この詩集のユヌス・エムレの作品なども紹介しながら、トルコの
旅日記をしばらく・・・
      

 

 
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