藤本すすむブログ「100万回生きたねこ」

2008トルコで歌う 5 「お祭り舞台」

<ベイパザル・お祭り舞台で>
| - | 15:31 | comments(0) | -
2008トルコで歌う 4 「ベイパザル賛歌」

<ベイパザル市民祭・開会式で>
| - | 15:09 | comments(0) | -
2008 トルコで歌う 3 「 親日国トルコ 」

<ベイパザルの小学校で>

 トルコは親日の国として知られている。トルコを旅する日本人はだれも
が、暖かく、好意的に迎えられる気分を経験するだろう。こんな歴史的背
景がある。

 明治22年、エルトゥールル号遭難事件というのがあった。トルコは、オ
スマン帝国末期、軍艦エルトゥールル号で特使オスマン・パシャを日本に
派遣した。日本に滞在すること3ヶ月後、東京湾を出発して帰国の途につい
たが、和歌山県串本沖で遭難・沈没。9月の話だからおそらく台風であろう。
 70名ほどの生存者を残し、約600名が死亡した。生存者を、住民が救助し
手厚く看護。二艘の軍艦によりトルコに無事送還されたのだった。
 この話は、トルコでは小学校の教科書に載っているのだと言う。
子どもたちには、神話化されたイメージとして、日本人を捉えているのか
も知れない。

 日露戦争で日本がロシアに勝ったことも、トルコ人が日本に敬意を払う
一つの要因である。
 トルコは、長年にわたりロシアの南下政策に悩まされていたので、極東
の小さな国・日本がロシアに勝利したことは、大きな驚きであったのだ。
 イスタンブールには「NOGI」というおもちゃ屋が、アンカラには「T
OGO」という靴屋もあるらしい。

 一般的には、エルトゥールル号事件と日露戦争での日本の勝利が,トルコ
が親日国である理由として語られる。
政治的にも、トルコ建国の父・アタチュルクが近代化政策のモデルを日本
に求めたり、第二次大戦後孤立していた日本の国連加盟など国際社会への復
帰を、トルコが協力に支援してくれたのだった。
 1988年に、イスタンブールのボスポラス海峡第二大橋が日本の企業により
架けられ、来年5月完成予定のボスポラス海峡・海底鉄道トンネルは、大成
建設により、着々とその工事が進められている。

 歴史的背景・政治経済的背景のほかに、私は一人の詩人・一つの歌が日本
のイメージをトルコ国民に大きな影響を与えているのではないかと考えてい
る。その詩人こそナーズム・ヒクメットであり、その歌は「少女」という歌
である。このことは、後日詳しく書くことになるだろう。

 イスタンブールから寝台夜行列車で10時間、アンカラへ到着。バスでや約
1時間走り、シルクロードの古都ベイパザルへ。お昼をモスクの近くの屋外
レストランでさっと済ませ、小学校へ向かう。リハーサルの時間もほとんど
く、バタバタしているうちに開演となった。

 ベイパザルの小学校での公演。トルコと日本の小さな旗を振りながら、ひ
らがなで書いた「ありがとう」の紙を振りながら、子どもたちが見入ってく
れた。歌、武術、日本舞踊、和太鼓の順で1時間ほど公演。
最初に出番の私は、盛り上げ役である。トルコ語でのMCや手拍子でまずは、
子どもたちや父兄たちをリラックス、楽しい雰囲気に。
 と思いきや、ギターを弾き始めるとすぐ、4弦のいつもなら切れることのな
い太い弦がプツン。ギターの弦が切れることは良くあることなので、そのまま
続行。
「ベイパザル賛歌」「幸せなら手を叩こう」「イスタンブール」をトルコ語で
歌った。「ベイパザル賛歌」は、この町のために作ってきた歌で、初演である。
 こんなに合わない手拍子も珍しいと感心するくらい、ばらばらな手拍子であ
る。昨年のアクヒサールの小学校では、面白いほど、ピタッとあったのに。
ギターを中止して、手拍子を一緒にやるのだが、今度はテンポが合わなくなっ
てゆく。「まあいいか」手拍子はあきらめて、歌だ。
「ベイパザル賛歌」のサビ「ベイパザル」「ベイパザル」、みんなの合唱が
始まった。子どもたちの歌声が私の胸に届く。嬉しそうに歌ってくれている
その時間をかみ締めながらステージに立っていた。これを狙ってサビから作
曲した歌だった。

 今でも、あの小学校での手拍子のばらつきが脳裏を掠めるときがある。
教科書で教わった日本人を目の前にし、子どもたちは興奮していたのだろう。
輝く瞳が、何よりもそれを語っていた。



 
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