藤本すすむブログ「100万回生きたねこ」

好きなことの中にヒントがあるよ

<3年ほど前、フリースクールで>

 今日は、私が理事をしているNPO法人の臨時総会があった。財務的に
困難など、諸般の事情により解散することとなったのだ。不登校・ひきこ
もりとなった生徒たちを対象にしたフリースクールだった。

 この2・3年は不登校生徒の数は統計的に減ったかのように報じられてい
るが、カウントの仕方のトリックがあったりで、九州や東北の各県ではむ
しろ増加しているし、今後も全国的にも減りはしないだろう、と理事長か
ら聞いた。

 現在の教育状況に一石を投じるべく、生徒たちの心の港となるべく、熱
い思いで立ち上げたNPO法人であった。
 私は5年前の設立時から、そんな想いを陰ながら支えようと会計担当の理
事として関与していた。理事長が、「終わるときはあっけないわね」とふと
漏らした言葉に、一抹の寂しさを覚えた。

 このフリースクールで3年ほど前、半年間ギター教室も担当した。
私は、今でもギターはうまくなく、基本的なコードストロークとアルベジ
オくらいしかできないが、ギーターに興味のある中学生2人が居て、初歩的
なことなら教えられれるかも知れないと始めたのだ。

 半年ほどして、その二人とも学校に戻れることとなり、ギター教室は終わ
った。そのひとりKちゃんが、フリースクール最後の日に、玄関のドアを締
め切れずためらっている姿に、私は「困ったことがあったら、音楽に戻りな
よ。とてもいい感性を持っているから。好きなことの中にヒントがあるよ。」
と、声をかけ「さあ、行きなさい」と見送ったのだった。

 彼女は高校生になって、学校に着いて行けなくなり、通信制の高校に転入
し、再びフリースクールへ戻ってきた。ギターは、あれからずっと続けてお
り、ヤマハのギタースクールにも通っているという。
 今日、学習担当主任のTさんから、「Kちゃんは、藤本さんにギターを習っ
てからずっと弾き続けているし、一人で夜行バスに乗り関西へライブを見に行
ったり、そのお金を稼ぐためにバイトしたり、考えられないくらい活動的な子
になりましたよ。音楽が中心に生活が回っているようです」と、うれしそうな
顔で話しかけられた。

 わずかな期間ではあったが、一人の女の子に、何かきっかけを作ってあげ
られたのかもしれない。
 私の中の、ひきこもりのふらねこ君へ。
 人生のヒントは、好きなことの中にあるのだよ!

| - | 20:23 | comments(0) | trackbacks(0)
新しい歌 歌ってゆけ


3月17に発売された『プレジデント、フィフティー・プラス』(プレジ
デント社)に、私の記事が掲載されている。
 1月下旬に取材インタビュー、2月13日のはっぽんライブで写真撮影が
行われ、楽しみにしていた。17日、立川駅ビルの書店に行くと、どっさ
りと積み並べられていた。さすが、全国販売の雑誌だなと思う。

 新生活人の「お金と時間の使い方」というコンセプトの雑誌で、資産
運用などのページのあと
  「生涯現役!一生モノの肩書きを手に入れる」
というタイトルで、経営アドバイザー、NPO代表、大学教授、写真家、
そして「シンガーソングライター・藤本すすむ」が紹介されている。

 文章を書いていただいた岡村さんとは、10年前、ある企業関係の情報
誌に、私のことを4ページにも渡る記事にしてもらったことが縁で、同
じ年齢でもあることから仲良くなり、『平成独立開業記』で一緒に執筆
したり、時々酒を飲み交わし、また、ライブに来ていただいたりしてい
た。
 岡村さんは私の歌の中では「黒髪ゆらせた風」が一番好きだという。
やはり、同世代の男の感覚なのかもしれない。この前のはっぽんのライ
ブでは、初めて聞いていただいた「越後望郷」に、「早くCDにしてく
ださい」と、うれしい感想を語ってくれた。

 新しいCDの準備に取り掛かり、遅々としている。ようやく4曲の幡
手さんのアレンジが完成。「越後望郷」もできた。もう少しである。
 雑誌記事のタイトルを「夢は捨てない!…」と付けていただいたが、
今でも、「いつになったら始まるのだろう」というほうが実感なのだ。
 応援してくださる人たちの想いを、ありがたく感じる春分の日の夜で
ある。

       暮らしに削がれ 失ってゆく 
       大切なもの 見つめなければ
       春の空よ 春の風よ
       新しい歌 歌ってゆけ

| - | 19:17 | comments(0) | trackbacks(0)
瑞々しいフォーク魂を見た

<ベランダの芽吹く姫りんご>

 最近よく聴いているCDがある。女性のシンガーソングライター・よしだ
よしこ。

 彼女は、その昔、フォークソングブームをつくったエレックレコードから、
吉田拓郎の次にデビューしたフォークグループ「ピピ&コット」のメンバー
であった。
 ピピ&コットが解散しソロとしてデビューしたのが、古いフォークファン
にはおなじみの、佐藤公彦(ケメ)と丸山圭子である。
 エレックレコードはその後、泉谷しげる、古井戸、海援隊などを世に出す
ことになる。私が高校を卒業して上京し、予備校に通っていた頃で、泉谷し
げるの神田共立講堂のコンサートは興奮して見た記憶がある。デビューした
ばかりの海援隊のコンサートでは、武田鉄也はステージで、バク転をしてい
た。
 最近、四谷コタンでのライブで、海援隊の千葉さん・中牟田さんと一緒に
なるときは、そんな当時のことを思い出す。

 よしだよしこは、ピピ&コット解散後、1年間アメリカを放浪し帰国、そ
れ以来、歌うことをやめたという。1999年、23年ぶりに今は亡き高田渡のす
すめで再び歌い出したのだった。2枚のCDをリリース。それが最近聴いて
いるもので、タイトル名は、「ここから」と「ア・シ・オ・ト」
 「ここから」の最後には、名曲『風景』が、『ア・シ・オ・ト』は、高田
渡さんに捧げた歌であろう。渡さんに吉祥寺の「いせや」で何度かお会いし、
話していただいたことも蘇るCDである。

 2月の初めに「はっぽん」で、彼女のライブを初めて見た。とても落ち着い
た雰囲気をかもし出しているのに、「ああ、いいなー」
 ギターがうまいなーと感心したが、彼女は丸山圭子や、水越けいこのギター
リストとしてのサポートメンバーでもあることをあとで知り、なるほど。
 何よりも感心したのが、歌っている表情だ。観音菩薩である。こんな素敵な
表情で歌うシンガーはめったにいないだろう。そんな表情を見ることができた
だけで、十分魅力的なライブであった。

 ライブの最後に、戦争をテーマにしている詩人、石川逸子の詩「大津島」を
朗読し、石川の詩に曲を付けた歌を歌った。「大津島」は、太平洋戦争の末期に
作られた人間魚雷に乗っている兵士の心情を書いた詩である。
 私も「カタクリの花」で戦争をテーマに歌っているので、ただならぬ共感を
持って彼女の朗読を聴いていた。その歌のときだけ、ステージの空気が変わった
感じがした。

 よしだよしこは、自分を見つめ、世の中を見つめ、歌っている。それは、歌詞
の世界において確かに伺われる。ステージで、「ほんとの事しか歌わない」と、
何度か語っていたのが印象的だった。はっぽんのライブのあと、「北海道、極寒
ライブツアー」を行い、全国各地を旅し歌い続ける行動力と、その澄んだ歌声を
うらやましくも思う。彼女は私と同じ1954年生まれ。瑞々しいフォーク魂を見た。
                             (文中敬称略)
 
| - | 20:32 | comments(0) | trackbacks(0)
「喜働」をどう読む?

<山形、山寺の芭蕉像>

 3月に入って仕事づけの「ふらねこ」だった。去年獲ったねずみの数を
明日、税務署に確定申告に行き、やっと一段落、春が来るという感じだ。

 山形の製菓会社「でん六」に勤めている妹から、「日本菓子BB協会」
発行の、菓子会社のクレーム担当の会報に書いた記事が送られてきた。
「でんでん でん六豆 うまい豆♪」小さな頃からなじみだった歌を口ず
さみながら、読んでみる。全国各地からの問い合わせや、時には嫌がらせ
の電話に対応している様子が読め、また職場の人たちと和やかに働いてい
る姿が文面や写真から伺われ「元気でやってるな」と安心した。

 山形の山寺にある芭蕉像、山形城址にある最上義明像が、「でん六」さん
の寄贈であることを、昨年山形を旅したとき、妹が教えてくれた。
地域文化に貢献する姿勢が、「でん六豆」のいろいろなお菓子のおいしい味
をつくっているんだなと思った。企業の味も経営者と従業員の精神の現われ
だろう。

 会社のスローガンである「喜働」を基に、仕事も人生も「明るく・元気に・
前向きに」をモットーにこれからも頑張っていきたいと思います。

 その記事の結びである。さて、文中の「喜働」をどう読もうか。
「きどう」とは読めるが、国語辞典には載っていないから、造語かもしれない。
 喜んで働く
 喜ばれて働く
 喜んで働かせてもらう
 …
 「喜んでいただくために働かせてもらう」
 これがいいかな。芳醇でゆとりのある精神を感じるではないか。
 仕事をこんな風にやれたら幸せだろう。
  芭蕉は、この山寺で「閑かさや 岩にしみ入る蝉の声」を詠む。
 「喜んでいただくために歌わせてもらいます」と言いたげな芭蕉像である。

 
| - | 00:48 | comments(0) | trackbacks(0)
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