2007.10.26 Friday
心に初めて触れた詩
<北スペイン・ロマネスクの教会>
朝から激しい雨が降っている。午前10時、予定時刻ぴったりに
デザイン会社のTさんが自宅に訪れた。この土砂降りの雨の中を、
傘を差し、自転車で来てくれた。
ホームページのリニューアルの打ち合わせである。7月にアッ
プした現在のホームページを再検討し、リニューアル版を制作し
てもらっている。基本的には、もう少し見やすいように配慮した
ものにする予定である。11月初旬にアップ出来る予定。
ホームページは、今年の計画の一つだ。せっかく作るのだった
らいいものをと考えており、一冊の詩集、または本のようなもの
になるような構想を持って始めた。
私の考えがころころ変わり、このホームページ制作で初めてお
会いすることとなったその会社の代表Oさんは、だいぶ私に面食
らっていた様子でもあった。とりあえず7月のアップを完了し、8
月終わりに、担当者Tさんも交え三人で酒場で呑みながら、私は
ホームページの遠大な構想「自分の成長の場の一つにしたい」こ
となど話した。やはり酒を呑んで忌憚なく話すのがいい。今後も
ホームページ制作をお願いできることになり、リニューアル版へ
と話が進んできたのだった。 ゆっくり時間を掛け、少ずつしホ
ームページを成長させたいと考えている。
打ち合わせは40分ほどで終わり、Tさんが帰るとき、玄関の額
縁に入った写真を見つけ、「これはどこですか」と彼が聞いてき
た。「さすが、目ざといですね。これは一昨年行った、北スペイ
ンのロマネスク教会です。10世紀頃のものなんですよ」
「ホームページの制作に携わり、少し藤本さんマニアです」と、
メールでそっと書き添えていてくれたTさん、その写真(自作曲
『わが青春のロマネスク』のイメージ風景の一つ)と共に、雨の
中帰って行く彼を見送った。「ぼくも外国を旅したいな」というT
さんに、その歌詩の一節を捧ぐ。
「青空に無限の 夢を描け」
ホームページの自分の「プロフィール」を叙事詩のようにしたい
という考えがあり、今回も少し書き変える予定である。
私が、初めて「詩」に触れた記憶を、降り続く雨を見ながら思い
だしていた。小学校5・6年生の担任だった小川先生が教えてくれた
詩が蘇ってきた。農家の次男として生まれた私に、その詩は、確か
にインパクトを持ち、心に初めて触れる「詩」であった。
大関松三郎・詩集『山芋』から
虫けら
ーくわ
どしんとおろして ひっくりかえした土の中から
もぞもぞと いろんな虫けらがでてくる
土の中にかくれて
あんきにくらしていた虫けらが
おれのーくわで たちまちおおさわぎだ
おまえは くそ虫といわれ
おまえは みみずといわれ
おまえは へっこき虫といわれ
おまえは げじげじといわれ
おまえは ありごといわれ
おまえは 虫けらといわれ
おれは 人間といわれ
おれは 百姓といわれ
おれは くわをもって 土をたがやさねばならん
おれは おまえたちのうちをこわさねばならん
おれは おまえたちの大将でもないし、敵でもないが
おれは おまえたちを けちらしたり
ころしたりする
おれは こまった
おれは くわをたてて考える
だが虫けらよ
やっぱりおれは土をたがやさんばならんでや
おまえらをけちらしていかんばならんでや
虫けらや 虫けらや
大関松三郎…昭和6年新潟県古志郡(現在長岡市)、
小作農家7人兄弟の三男として生まれる。
6年生のとき、たくさん書いていた生活詩を詩集としてまとめる。
昭和19年マニラの海軍通信隊に赴任中、南シナ海で魚雷攻撃を受
け戦死。
昭和26年恩師寒川道夫により詩集『山芋』として出版される。