〈写真:中国とパキスタンの国境の町で〉
秋は旅立つ季節である。9月の声を聞いたとたん、夏は遠慮深く陽射
しを弱め、朝から秋風が立つ。「身も心も引き締めて」と、さわやかに
転調を促す朝だった。
午後から、久しぶりに、人のライブ巡りをする。
午後、四谷コタンで「舞台朗読・藤沢周平の世界」を見る。語りは、
「可否の会」の萩田さんと下地さん。一緒に舞台をしたり、私のライブ
に来ていただいてる方々だ。それぞれが40分、台本なしで「遠ざかる声」
と「驟り雨」を語る。藤沢周平の歯切れの良い文章が心地よく耳に響く。
声と物語の流れを、うっとり味わっていた。ほんの一呼吸ほどの「間」
が、大切なんだなあと思いながら聞いていた。
夕方は、やはりコタン仲間の富所さんと、書道展を見に渋谷のギャラ
リーへ。岐阜の郡上八幡在住の書家・六龍庵東道さんの個展「郡上から
の風」。竹を裂いて作つた筆で書かれた漢字一文字の書は、飛騨の風が
心象や観念を形作っているように、目を自由に遊ばせてくれる。
東道さんの鋭い眼差しと風貌に「自然人」を感じた。 一つの作品は、
一発勝負というお話を伺い、何度も何度も歌詞を書き直し一つの作品に
仕上げる自分の方法を、内心甘いのかなと思った。
夕方6時は、もう薄暗くなっていた。すっかり秋の夕暮れである。
急いで、大森へ行く。瀬戸口修さんと野本直美さんのジョイントライブ。
「風に吹かれて」というライブハウスは、1年ほど前に出来たばかりの
フォーク系の店。
ライブも楽しませてもらったたが、久々に、Tさん、Aさん、I君、
Mちゃんに会えたのが、同窓会的のりで嬉しかった。20代後半からしば
らく四谷コタン続けていた「ランブリングフォーク」の常連たち。あれ
から20数年立つが、あの頃と変わらない雰囲気で、名残惜しく帰って
来た。
秋は、旅をする。シルクロード・中国からパキスタンへ通ずるカラコル
ムハイウェイのバスの旅は、今の国際情勢では、行けないルートかもしれ
ない。
カラコルムハイウェイ
作詩・作曲 藤本すすむ
カラコルムハイウェイ バスに揺られて
カラコルムハイウェイ 西へ西へと
河を渡るラクダや 羊飼いの少年
パミール高原を超え 国境越えて
見知らぬ世界で息づく 大地や人の暮らし
昔も未来も 変わらずにあるだろう
通り過ぎてゆく景色が さよならの手を振る
カラコルムハイウェイ バスに揺られて
カラコルムハイウェイ 西へ西へと
赤茶色の岩山 深く切れ込む渓谷
命あるかのように 流れる谷川
インダス川に交わり はるか海へ注ぐ
村から町へ 町から都会へ
河は旅人のように 人の暮らし見つめ
カラコルムハイウェイ バスに揺られて
カラコルムハイウェイ 西へ西へと